税効果会計の適用
前述のような企業会計と税法の間に起きる損益認識時期との差異のことを一時差異といいますが、具体的には、企業会計上の損益で税引前当期純利益が黒字だったのに、税務上の損益による法人税等の額が税引前当期純利益を上回ると、税引後利益が赤字になってしまうようなケースです。
ちなみにこの場合は、企業会計上の税引前当期純利益が(収益-費用)より課税所得(益金-損金)の大きいケースです。税効果会計を適用するなら、こうした一時差異に対して法定実効税率を乗じた額を法人税等調整額の損益計上として、税引前当期純利益と法人税等とを対応させる会計手続きをとるということになります。
法定実効税率というのは総合的な税率のことで、課税所得に対する法人税や、住民税、事業税の表面税率を基本とした所定の算定式によるものです。
繰延税金資産、繰延税金負債などの税効果会計は、一時差異に法定実効税率を乗じて算定されます。税効果会計の対象となる税目には、法人税法の税も含まれ、他には法人事業税の所得割、都道府県を対象とした法人県民税等の所得割、市町村を対象とした法人市民税等の法人税割等も該当しますが、それらの均等割分は除かれます。
企業会計上の損益と税法上の損益との差異の中で永久差異もあります。これは交際費や受取配当金のように税務上、永久に損金、益金として認められない差異のことで、永久差異は期間配分による当期純利益と税金費用との対応ができないので、税効果会計の適用からは外れます。